(会員談話室投稿)

        安井元副会長の「COP21のパリ協定を巡る国内のせめぎ合い」について:

                  野々垣 三郎( 昭和28年 応用化学科卒)

       

 多くの方々が、大気中CO2濃度が増せば地球温暖化が起こると考えられているようですが、これは、現状では、誤りです。

 水蒸気(H2O)はCO2よりも強力な温室効果ガスであり、しかも、大気中に、分子数換算で、CO2よりも桁違いに多く含まれ、地球温暖化に大きく寄与していますが、現状では、その大気中濃度(絶対湿度)が増しても、さらなる温暖化は全く起こりません。なぜかというと、絶対湿度が増しても、地表が放射する赤外線を水蒸気が吸収する割合(赤外吸収率)が全く増加しない(赤外吸収が飽和している)からです。
水蒸気による赤外吸収に飽和が起こる理由は、地表が放射する赤外線には、水蒸気に吸収されるものと吸収されないものとがあり、水蒸気濃度が或る値を超えると、吸収されるものは悉く吸収されてしまい、それ以上に水蒸気濃度が増しても吸収率が変わらなくなるからです。

 これと全く同じことがCO2の場合にも起こっています。Jack Barrett* によれば、厚さ100mの大気層において、CO2濃度が、産業革命前の値から、その2倍になったとしたときに、温室効果ガス全体の赤外吸収率は0.5%だけしか増加しないそうです。実際の大気層の厚さは1気圧で約8000mすなわち100mの80倍もありますから、実際の大気層中のCO2による赤外吸収は完全に飽和していると考えられ、現在のCO2の濃度が2倍化しても、さらなる温暖化は全く起こらないはずです。

 因みに、1970年代頃までは、有機物の分析手段の一つとして、赤外吸収スペクトルの測定が行われていました。その際、強い吸収ピーク、例えば、カルボニル基(>C­=O)の吸収ピークが頭打ちにならないように、試料の厚さが0.05mmを超えないようにしていました。大気中のCO2濃度を400ppmとし、そのCO2を液化させたとし、その液体の比重を仮に1としますと、厚さ約6mmの層となります。このような層の赤外吸収が完全に飽和していることは、上記の事柄から明らかであると思います。

 私は、植物の唯一の主食であるCO2を悪者呼ばわりするIPCCを許せないだけであって、COP21の目標を「地球温暖化防止」から「化石燃料消費抑制」に替えて頂ければ何の文句もなく、むしろその趣旨に大賛成です。

* http://www.warwickhughes.com/papers/barrett_ee05.pdf (p. 1042)

**CO2濃度2倍化によって起こる温暖化は0.6℃よりもずっと小さい

 


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