(会員談話室投稿)

        安井元副会長の「COP21のパリ協定を巡る国内のせめぎ合い」について:

                    御園生 誠 (昭和36年卒、元親和会副会長) 

 安井先生の時宜を得た問題提起に心より敬意を表します。昨年末のパリ協定により気候変動(二酸化炭素削減)とエネルギー戦略(時間軸に沿ったベストミックス)の議論は新段階に入ったように感じています。関連して、若干の感想を申し上げます。

 安井先生の「化石エネルギーが、資源量はあっても、今世紀中に消滅する」は大事なご指摘で興味深いのですが、前半は賛成ですが、後半にはいささか異論があります。エネルギー戦略に必要な大量、安価、安定、安全な、環境配慮した一次エネルギーの供給を考えると、21世紀末においても、相当量は化石エネルギーが残るのではないでしょうか。将来予測は当たったり外れたりで、過去になされた予測の印象は人によってまちまちです。

 化石エネルギーの場合、気候変動に対する影響が危惧されますが、IPCCの気候モデルによるシミュレーションは、過去の気温変化のうち、20世紀後半しか再現していませんし(再現したとも言っていないようです)。19世紀後半、20世紀前半、21世紀初頭の気温変化は再現したとは言い難く、人間起源の影響もほとんどみられません。したがって、IPCCのシミュレーションによる予測に過度の信頼はおけないと考えています。40個くらいの気候モデルを採用したと聞きますが、過去を良く再現したモデルのみを使った将来予測を知りたいものです。個人的には、赤祖父氏ほかの自然変動主因説(小氷期からの回復に重なる数十年周期の小変動)を無視できないと思っています。

 数多く存在する重大なリスクを、優先順位をつけて、いかに管理するかが問題ですが、21世紀の気温上昇はIPCCの下位予測に落ち着くと、密かに思っているのかもしれません。

 関連して幾つもの意見が述べられていることをうれしく思いました。千葉会長の「化石燃料を使って化石燃料に頼らない社会を実現せねばならないという現実、云々」は同感です。小宮山先生の添付資料には大変興味を持ちました。いちいちの妥当性はとても判断できないのですが、電気・燃料電池自動車は、私も、走行時(発電を含む)と自動車製造時を併せて試算したことがあります。それによると、現状では、二酸化炭素の排出削減効果(省エネ効果)はほとんどありませんでした(製造時については、データがないので、二酸化炭素排出≒エネルギー消費が、価格に比例すると大胆に仮定)。今後の大幅な改善に期待するということでしょうか。

 再生可能エネルギーには、現状で前記条件を満たす有望なものはなく、今は、拙速な拡大普及よりもそれに将来つながるような着実な基盤技術開発を優先すべき時ではないか、と考えています。歳をとって保守的になったと言われるかもしれませんが。


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