年頭のご挨拶



                                         親和会会長 伊藤 東 


皆様には新しい年を迎え、新たの目標を持たれた方も多いことでしょう。経団連会長は2代続いて化学産業より選ばれるとの報道が有りましたが、化学産業には「日本のイノベーション」を先導する役割が期待されて居ります。
一方、日本の化学産業は大きな変革期を迎えて居ります。第一は「人口の減少による国内需要の縮小」、第二は「石油化学の国際競争低下」、第三は「重大事故の多発」です。

1.企業の海外立地の加速とその影響
(1)「国内需要の縮小」により大型投資・新規投資が海外で実施される傾向が強まり、“産業の空洞化”が化学産業でも進展しています。
(2)中東から“原料を輸入”し、“製品にして輸出”する構造の「石油化学の国際競争力」は低下し、構造転換が求められ、“付加価値”の高い産業への進出を図って居ります。
(3)国内でのプラント建設が減少しプロセスを理解する機会が失われ、“化学プラントの危険性”が忘れられ、化学設備での大事故が続く要因となって居ります。

2.安全確保の必要性
(1)化学プラントは“アナログ操作”から、“DCS操作”へと変化した。“アナログ操作”ではプロセス理解に基づく「操作の意味」の把握が必須でしたが、“DCS操作”ではマニュアルによる「ボタン操作」です。プロセスや個別操作の理解が希薄化し、「管理値管理」は出来るが、管理値の“根本的理由”が理解できず、異常が発生しても“危険の程度”の判断が出来なくなって居ます。
(2)自動化に伴う現場作業員の減少と“アナログ操作”を経験した「団塊の世代」の卒業も有り、現場での「危険度把握の体制」は弱体化。最近、頻発している化学工場での爆発・火災は、主としてプロセス・単位操作の理解不足が要因の一つでした。現場でのプロセス解析を担当する「技術スタッフ」の確保が必要と思われます。

3.大学への期待
(1)国内生産の汎用品は海外との“賃金差”に加え、“設備規模の差”も有り、輸出競争力を失って来て居ります。
(2)石化製品の供給先である家電の国内生産も減退しました。産官学が連携して国内生産でも競争力が確保できる「高付加価値製品」の開発が急がれて居ります。親和会のネットワークを活用して、新技術・新製品の開発促進を図ることを期待致します。
(3)企業に入る新卒者の大部分が研究を希望します。しかし、生産現場にも技術者が活躍する場が多く有ります。現場では“安全優先”の考えにて生産活動が行われて居りますが、学生時代に「安全に関する基礎知識」を身に付けることが必要です。化学物質の危険性、発熱・除熱、異常反応の対応、爆発範囲、物質収支・熱収支などは研究・製造を問わず必要であり、化学反応の“潜在的危険性”に関心を持って下さい。企業でも教育は致して居ますが、学生時代より「安全の重要性」を考えることが望まれます。『危険なものを安全に取り扱う技術』が化学産業の基本です。

4.親和会の活用
(1)親和会会員の多くは大学、官庁、産業界にて、化学分野の研究・生産活動に関与して居ります。所属する団体・企業は異なっても会員相互の“親和力”が有ります。全くの初対面でも親和会メンバーと分かるだけで話がし易くなります。他企業・他団体との打ち合わせ前に、「親和会名簿にて事前確認」をして置くことをお勧め致します。
(2)「親和会総会」は早めの時間帯に始めて居りますので、“終了は早め”です。総会に誘い合って出席し、「総会後の同期2次会」の開催をお勧めします。

5.その他
(1)昨年、工学部5号館の多くの機能が“工学部新3号館”に移動しました。母校の研究室往訪時は5号館か3号館かをご確認頂くと良いと思います。
(2)親和会の事務処理が“効率化”されました。これは事務局担当の侘美さんと大久保事務局長のご努力に因ります。“黒字体質”への転換を含め、親和会事務局に感謝申し上げます。

本年は午年です。“快足”を以って社会の変化に対応されますことをご祈念申し上げます。親和会総会への参加者が増加傾向です。「秋の親和会総会」でお会い致しましょう。

 


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